「矯正したら顔は変わる?」歯並びと横顔・口元の変化について
「矯正をすると顔が変わりますか?」
矯正相談で、患者さんからよくいただく質問のひとつです。
特に、
「口元が出ているのが気になる」
「横顔をきれいにしたい」
「抜歯矯正をすると顔が変わると聞いた」
「逆に、矯正をすると老けて見えるという話も見ました」
など、歯並びだけではなく、お顔や口元の変化を気にされている方は少なくありません。
SNSやインターネットには、矯正治療前後の写真も数多く掲載されています。その中には「別人のように変わった」と感じる写真もあるでしょう。
では、本当に矯正治療で顔は変わるのでしょうか。
最初に大切なことをお伝えします。
矯正治療は美容整形ではありません。
鼻そのものを高くしたり、顎の骨格そのものを自由に変えたりする治療ではありません。
しかし、歯の位置が変化すると、それを取り囲んでいる唇や口元の見え方が変化することがあります。
その結果として、
「顔全体の印象が変わった」
と感じることは十分にあります。
今回は、歯並びと横顔・口元の関係について、矯正歯科の立場から分かりやすくお話しします。
目次
- 1 なぜ歯を動かすと顔の印象まで変わるのでしょうか?
- 2 特に変化を感じやすいのは「横顔」と「口元」
- 3 「Eライン」は矯正治療で必ずきれいになる?
- 4 抜歯矯正の方が顔は大きく変わる?
- 5 「非抜歯の方が良い」とも限りません
- 6 「矯正すると老ける」という話は本当?
- 7 ほうれい線はどうでしょうか?
- 8 鼻が高くなったように見えることはある?
- 9 顎が出た・顎ができたように見えるのはなぜ?
- 10 正面の顔も変わるのでしょうか?
- 11 「小顔になりますか?」という質問について
- 12 SNSのビフォーアフターを見るときに注意してほしいこと
- 13 だからこそ「診断」が重要です
- 14 治療前に「どうなりたいか」を伝えてください
- 15 矯正治療は「顔を変える治療」ではありません
- 16 まとめ|歯並びだけでなく「お顔とのバランス」も大切です
なぜ歯を動かすと顔の印象まで変わるのでしょうか?
顔の印象を決めているのは、目や鼻、輪郭だけではありません。
実は「口元」も大きな要素です。
唇の内側には歯があります。
そのため、前歯が前方へ出ていれば唇も前方へ押し出されやすくなります。
逆に、矯正治療によって前歯の位置が後方へ移動すると、それに伴って唇の位置や口元の突出感が変化することがあります。
つまり、
歯を動かした結果として、その周囲の軟組織の見え方が変わる
ということです。
これが「矯正をしたら顔が変わった」と感じる大きな理由のひとつです。
特に変化を感じやすいのは「横顔」と「口元」
矯正治療による見た目の変化は、正面よりも横顔で分かりやすいことがあります。
特に、上下の前歯が前方へ傾斜している、いわゆる口元の突出感が強い方の場合です。
前歯の位置を適切に整えることで、
- 唇の突出感が減る
- 口を自然に閉じやすくなる
- 横顔がすっきりして見える
- 鼻・唇・顎のバランスが整って見える
といった変化が生じる可能性があります。
ただし、どのくらい変化するのかは一人ひとり違います。
歯並びだけではなく、骨格、唇の厚さ、筋肉、年齢、治療方法など多くの要素が関係するためです。
「Eライン」は矯正治療で必ずきれいになる?
横顔について調べたことがある方なら、「Eライン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
一般的には、鼻先と顎先を結んだラインと唇との位置関係を見る目安として知られています。
確かに、矯正治療によって口元の突出感が改善すると、横顔のバランスが変化することがあります。
しかし、
「Eラインの内側に唇が入れば美しい」
という単純なものではありません。
鼻や顎の形、骨格、唇の厚みなどは一人ひとり違います。
さらに、美しい横顔の感じ方にも個人差があります。
Eラインはあくまでも評価項目のひとつであり、それだけを目標に矯正治療を行うものではありません。
抜歯矯正の方が顔は大きく変わる?
これも非常によく聞かれる質問です。
歯を並べるスペースが不足している場合などには、永久歯を抜歯して矯正治療を行うことがあります。
抜歯によって得られたスペースを利用して前歯を後方へ移動させる治療では、口元の変化が比較的大きくなる場合があります。
そのため、
「抜歯矯正=顔が変わる」
という情報が広まっているのでしょう。
しかし、これも単純ではありません。
抜歯するかどうかは、
- 歯の大きさ
- 顎の大きさ
- 歯並び
- 前歯の傾斜
- 骨格
- 横顔
- 噛み合わせ
- 口元の状態
などを総合的に診断して決めます。
顔を変えるために歯を抜くわけではありません。
必要な治療を行った結果として、口元にも変化が現れると考えていただく方が適切です。
「非抜歯の方が良い」とも限りません
「健康な歯は絶対に抜きたくない」
そう思われるのは当然です。
私たちも、必要がなければ歯を抜くことはありません。
しかし、「歯を抜かないこと」だけを最優先にすると、無理にすべての歯を並べることで前歯が前方へ出てしまうケースがあります。
歯並びだけを見るときれいでも、口元がさらに突出してしまえば、患者さんが望んでいた結果とは違ってしまうかもしれません。
反対に、抜歯が必要ない方へ抜歯治療を行うべきでもありません。
大切なのは、
抜歯か非抜歯かという方法そのものではなく、その患者さんにとってどちらが適切なのか
ということです。
「矯正すると老ける」という話は本当?
インターネットでは、
「抜歯矯正をしたら老けた」
「ほうれい線が深くなった」
「頬がこけた」
といった体験談を目にすることがあります。
これを見て不安になっている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、お顔の変化には矯正治療以外にも、
- 年齢
- 体重の増減
- 表情
- 撮影角度
- 光の当たり方
- 加齢による軟組織の変化
など、多くの要因が関係します。
長期間にわたる矯正治療では、治療前と治療後で年齢も当然変わります。
そのため、写真だけを見て「この変化はすべて矯正が原因」と判断することはできません。
もちろん、前歯の位置を大きく変化させれば口元の印象も変化します。
だからこそ、治療前に歯並びだけでなく、口元や横顔まで含めて診断することが重要なのです。
ほうれい線はどうでしょうか?
「矯正するとほうれい線が深くなりますか?」
これもよく聞かれます。
ほうれい線は、皮膚や皮下組織、頬のボリューム、加齢など複数の要素によって生じます。
そのため、
矯正治療をすれば必ずほうれい線が深くなる、あるいは薄くなる、と断定することはできません。
口元の突出感が変わることで顔の印象が変化し、結果としてほうれい線の見え方が違って感じられる可能性はあります。
しかし、それを矯正治療の効果として約束することはできません。
鼻が高くなったように見えることはある?
矯正治療で鼻そのものが高くなるわけではありません。
ところが、口元が後方へ下がることで、
相対的に鼻が高く見える
ことはあります。
これも「顔が変わった」と感じる理由のひとつでしょう。
鼻が変わったのではなく、鼻と口元との位置関係が変わった結果、横顔全体の印象が変化したということです。
顎が出た・顎ができたように見えるのはなぜ?
口元の突出感が改善すると、これまで目立ちにくかった顎先が相対的にはっきりして見えることがあります。
これも顎の骨そのものが新しく大きくなったわけではありません。
歯や唇の位置関係が変わったことで、顔全体のバランスが違って見えるのです。
ただし、骨格的な問題が大きい場合には、歯を動かす矯正治療だけでは改善できる範囲に限界があります。
その場合には、外科的矯正治療が選択肢となるケースもあります。
正面の顔も変わるのでしょうか?
横顔ほど分かりやすくなくても、正面から見た印象が変化する方もいます。
特に大きいのが笑顔です。
歯の重なりや傾きが整い、歯列がきれいになることで、笑ったときの歯の見え方が変わります。
以前は歯並びが気になって口を閉じて笑っていた方が、治療後には自然に歯を見せて笑えるようになることもあります。
これは骨格が変化したという話ではありません。
しかし、その方の表情が明るくなれば、
「顔の印象が変わった」
と周囲の方が感じることもあるでしょう。
矯正治療による変化は、単純なミリ単位の歯の移動だけでは語れない部分もあるのです。
「小顔になりますか?」という質問について
残念ながら、
矯正治療=小顔治療ではありません。
歯を動かしたからといって、顔の骨格そのものが小さくなるわけではありません。
ただし、口元の突出感が改善したり、噛み合わせや唇の閉じ方が変化したりすることで、以前よりすっきりした印象になる方はいます。
それを「小顔になった」と感じることはあるかもしれません。
しかし、矯正治療の目的として「小顔になる」と約束することは適切ではありません。
SNSのビフォーアフターを見るときに注意してほしいこと
現在はSNSでたくさんの矯正治療症例を見ることができます。
治療を検討するうえで参考になる一方、注意していただきたいこともあります。
写真は、
撮影角度、レンズ、照明、表情、メイク、体重などによって印象が大きく変わります。
さらに、その方と自分では骨格も歯並びも違います。
「この人がこうなったから、私も同じ顔になる」
とは限りません。
矯正治療は、誰かの顔に近づける治療ではありません。
ご自身の歯並び・骨格・口元の中で、より良いバランスを目指す治療です。
だからこそ「診断」が重要です
矯正治療では、単に歯がガタガタしている場所だけを見て治療方法を決めるわけではありません。
口腔内写真、レントゲン写真、歯型など必要な資料をもとに、
歯の位置、骨格、噛み合わせ、口元などを総合的に評価します。
そして、
「どこまで歯を動かすのか」
「抜歯が必要なのか」
「どのような口元を目指すのか」
を検討します。
同じように前歯が出て見える方でも、原因が歯なのか骨格なのかによって治療方針は変わります。
だからこそ、インターネットの情報だけで「私は抜歯した方がいい」「非抜歯がいい」と決めてしまうのはおすすめできません。
治療前に「どうなりたいか」を伝えてください
矯正相談では、
「歯並びだけをきれいにしたい」
「横顔も気になります」
「口元をできるだけ下げたい」
など、ご希望を遠慮なくお話しください。
同じ歯並びでも、患者さんが何を一番気にされているのかによって、治療計画を考える際に重視するポイントは変わります。
もちろん、医学的に実現できることとできないことがあります。
だからこそ、治療開始前に、
「どこまで変化が期待できるのか」
を歯科医師と共有しておくことが大切です。
矯正治療は「顔を変える治療」ではありません
ここまで顔や口元の変化についてお話ししてきましたが、最後にもう一度大切なことをお伝えします。
矯正治療の目的は、顔を別人のように変えることではありません。
歯並びや噛み合わせを整え、お口を健康な状態へ導くことが基本です。
その過程で歯の位置が変化し、口元や横顔の印象にも良い変化が生じることがあります。
ですから、
「矯正すれば絶対に横顔がきれいになる」
「抜歯すれば必ず口元が下がる」
「矯正すれば小顔になる」
という単純な話ではありません。
一人ひとりの状態によって、変化の内容も程度も異なります。
まとめ|歯並びだけでなく「お顔とのバランス」も大切です
「矯正したら顔は変わる?」
答えは、
歯の位置が変化することで、口元や横顔を中心に顔の印象が変化することはあります。
ただし、矯正治療は美容整形ではありません。
鼻や顎などの骨格を自由に変える治療ではなく、変化の程度にも個人差があります。
だからこそ大切なのは、
歯だけを見るのではなく、お顔全体とのバランスまで考えて治療計画を立てること。
そして、治療前にご自身が何を気にしていて、どのような変化を望んでいるのかを矯正歯科医へ伝えることです。
「歯並びだけでなく横顔も気になる」
「抜歯すると顔がどう変わるのか心配」
「自分の場合はどの程度変化するの?」
そんな疑問があれば、ぜひ矯正相談の際にお尋ねください。
ご自身のお顔と歯並びに合った治療を、一緒に考えていきましょう。


